こんにちは、カナキティです。

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。前回の記事を書いたら友人の監督に「良いね、もしかしてもうすぐ死ぬ?」と言われて「そうなのかなー?」なんて笑っていましたが、実際その後私のiPhoneが死にました。しばらく社会と断絶され、計らずともSNSデトックスをたっぷりすることとなりました。ただいま電子の海よ。


今日は唐突に、飛行機の話をしたいと思います。

20代、毎年ヨーロッパやアジアへ公演に行っていた頃は、本当に頻繁に飛行機に乗っていました。しかも長距離。お金がないから乗り継ぎまくる、長時間のフライト。

でも私はわりと飛行機の時間が好きなんですよね。これわかってくれるひと、いるだろうか。

特に当時は物凄く忙しかったせいかもしれないのですが、10時間近く、とにかく何も出来ない、電波も届かないところにいる、というのはなんだか心地よくて。最近はWi-Fi使えちゃいますけどね、機内も。

だってさ、休もうと思っても休めないじゃない、自分の生活のなかにいると。次々なにかやらなきゃならないことがでてきて。だから完全に無、みたいな時間はとても豊かに感じましてね。今はそういう時間を意識的につくれるようになった気がするけれど、若い頃は本当に休み方がわからなかったな。

そして機内では出来ることがすごく限られているのもいい。映画にしても、あるものの中から選ぶしかない。そして飛行機で観ると、ほかにすることがないから大体のものは普通より面白く思えるような。あれは特殊な脳の状態なのでしょうね。不思議な集中の仕方になるし。なにせ空中にそんなに長いこといるのだからね。身体がその影響を受けないわけがない。実際、CAさんたちは自律神経を壊してしまうことがあったりするそうで、本当に大変なお仕事と思います。

さらには時間の感覚もなんだかおかしい気がする。自身に対して経過している時間というのは一定の事実としてあるけれど、国を跨いでいくと、前日に向かって進んでいくわけですから、なんだかワープのようではないですか。逆行じゃないですかそんなの。大体日本から何処かへ向かうと、時差は「マイナス何時間」という国ばかりで、つまり過去に向かっているってなんだか、SFっぽいです。ロマン感じます。

しかも空の上で、何処の国にも属していない時間なわけです。治外法権みたいな。いや、正確にはそれぞれの空にも国境があって、航空法があるでしょうけれど。笑

でも、あるときハッとしたことがあります。何歳くらいの時だったのだろう。十代だったかな。飛行機の窓から通過する何処かの国の土地をぼんやり眺めていたときのことです。ふと思ってしまったのです。

「うわ、当たり前だけど国境って実際には引かれてないんだ

すっごいバカみたいなことなのですが、なんとなく私が世界というものを思い浮かべるとき、それは世界地図のイメージなのですよ。だからといって、土地に本当に線が引いてあるわけないのに。でも実際にこうして線が引いてあるわけではない様を目の当たりにすると、なんだか感動してしまったのです。人間が勝手に区切ってるだけなんだなって。土地を。

それでなんだか、国はそれぞれあるわけなのですが、なんというかもっと地上を全体的に捉える感覚になったというか、そんな姿に相対したというか。まるっと地球なんだなって感じちゃったわけです。これが宇宙から見るならば、もっとはっきりそう思うのだろうな。本当に私たちは一つの星に住んでいるのだなって。


そんなわけで、飛行機についてでした。

海外旅行とは、外国に滞在することだけに体験があるわけではなくて、もう日本の国際空港に着いた瞬間から、旅のインスピレーションは始まっているように思います。あの「ここから世界に立ち向かうぞ」という感じ、そして慣れ親しんだ暮らしや人から遠ざかっていくような寂しさと焦燥感。特に成田空港のあの古さと何にもないだだっ広い感じはいいよね。まあ遠いから羽田が国際空港になって本当に嬉しいですけどね。

私は観光はほんとうに興味がないし、日本にいてもレジャーが苦手なのですが、旅は好きです。移動するのが好きってことなのかな。笑 

何処かから何処かへ向かっているとき、一人でいろいろ考えること。それは大体、圧倒的に孤独で自由。外国のひとに囲まれて、見知らぬ土地で見知らぬルールのなか、自分のちっぽけさをひしひし感じる。普段の生活では体験し得ない、Vunerableな状態になる。そうすると、己の無力さがよくわかる感じがします。

そういうところだろうな、私が旅が好きなのは。自分を追い込んで未知の体験をしたがる。ドM

別に旅慣れてるとかではなくて、自分でも毎回よく一人で飛行機乗れてるな、乗り継ぎとか出来てるなって感じなんですよ。いや、実際出来てないのよ、何もスムーズには。知らないおじさんとかが助けてくれるだけで。そういう一つ一つを細かく記憶している。誰かに親切にしてもらった温度で、この身体ができているような気がする。


オマケでもうひとつ。私は何故か、離陸前の緊急時の案内をものすごくちゃんと見てしまう。酸素マスクの装着の仕方とか、脱出の仕方とかのやつ。それって普通?皆こんなにちゃんと見てる?笑 頭に入れたところで実際迅速に動けるかは自信がありませんが、私の中の優等生な部分が出てしまいますね。おほほ。

各航空会社によって、それぞれビデオが違って面白い。SASとかはなんかすごいオシャレで、美しい北欧の自然を背景にめちゃくちゃスタイリッシュに説明が出てきます。スタイリッシュ過ぎてちょっとわかりにいけど。笑 

国内線などで座席にモニターがない便だと、CAさんが自らやってくれるよね。あれをいつもかっこいいなって思っています。あの慣れたスムーズな動き。

ではhave a nice flight.

(こんな時期に皆飛行機乗る予定なんてないと思うけれど)